下層悪天予想図の見方
下層悪天予想図は、気象庁が主に小型機の運航向けに提供している予想図です。地上(海上)から高度約15,000ft までの空域を対象に、雨や雪、雷、乱気流、地上の視程不良域、雲の範囲と雲頂・雲底、さらに0℃の高さまでが1枚にまとめられています。VFR で飛ぶ高度帯の悪天を一目で把握できるため、出発前のブリーフィングでは地上天気図や TAF と並んで重宝する資料です。ここでは2026年10月19日の西日本の図を例に、地図上の記号と下部にある表の読み方を整理します。
どんな資料か
気象庁の案内にある下層悪天予想図の基本仕様は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の高さ | 地上(海上)から高度約15,000ft まで(図の題名にも「SFC - FL150」とあります) |
| 範囲 | 北海道・東北・東日本・西日本・奄美・沖縄の6つの領域。1回の飛行がおおむね1つの領域に入るように分けられています |
| 発表の間隔 | 3時・6時…21時・24時の3時間ごと、1日8回。図が気象庁のホームページに載るのは、その時刻のおおむね90分後です |
| 予想する時刻 | それぞれの回の3時間後・6時間後・9時間後 |
| 作り方 | 数値予報モデルの結果から自動で作った図 |
図の左下には、基準時刻である「BASE TIME」と、予想対象時刻である「VALID TIME」が UTC で記載されています。日本時間に直すには、どちらにも9時間を足します。図の名称にある「FBOS03」の末尾の数字や、ファイル名にある FT3・FT6・FT9 の「FT」は、BASE TIME から何時間後の予想かを表しています。今回の例では BASE TIME が 0000UTC、VALID TIME が 0300UTC なので、19日9時発表・19日12時の予想(FT3)にあたります。
読むうえで気をつけたいのは、1枚の図はその時刻1点の予想にすぎないという点です。たとえば FT3 と FT6 のあいだの3時間に天気がどう移り変わるかは、図には描かれません。また気象庁の注意書きによると、雲の範囲はその時刻の予想である一方、雨や雪の範囲は前1時間の降水を示すため、降水予想があっても雲が描かれない場合があります。さらに、数値予報モデルから自動作成される図という性質上、気象庁が発表する飛行場予報(TAF)や台風予報と内容が食い違うこともあると明記されています。
2枚の地図に描かれる記号

図の上半分には地図が左右に2枚並んでいます。左が降水・雷・乱気流、右が雲と地上視程の図です。それぞれの記号は左下の凡例と対応しています。
| 凡例の表記 | 図での描き方 | 意味 |
|---|---|---|
| Rain area | 薄い緑の塗りつぶし | 雨の範囲 |
| Snow area | 薄い紫の塗りつぶし | 雪の範囲 |
| TS | 赤い稲妻の形の記号 | 雷(発雷域) |
| MOD TURB | 茶色の記号と、範囲を囲む茶色の破線 | 並の乱気流。近くに上下2段の数字で高さが添えられます |
| (OCNL SEV) | ピンクのギザギザの線 | 凡例では MOD TURB の横に括弧つきで示されています(OCNL は occasional、SEV は severe の略語) |
| SFC VIS<5km | 薄いオレンジの塗りつぶし | 地上の視程 5km 未満 |
| SFC VIS<1km | 濃いオレンジの塗りつぶし | 地上の視程 1km 未満 |
| Cloud area | もこもこした黒い線で囲んだ範囲 | 雲の範囲。分数の形の数字が雲頂(上)と雲底(下) |
| 0℃ level | 青い破線 | 0℃の線 |
雲頂と雲底の数字は、凡例に「x100feet」とあるとおり 100ft 単位です。「145/10」と書かれていれば、雲頂 14,500ft・雲底 1,000ft と読みます。凡例には「Above MSL」とありますが、気象庁の注意書きでは「雲底・雲頂高度はフライトレベルで示しており、実際の高度とは異なる」と説明されています。いずれにしても地上からの高さ(AGL)ではないため、標高の高い空港や山岳地帯を飛ぶときは地形の標高を差し引いて考える必要があります。また、雲が複数層に重なる予想のときは一番下の層だけが描かれます。雲頂の数字より上に雲がないとは限らないので注意が必要です。
着氷そのものを示す専用の記号はありませんが、気象庁は FL020・FL050・FL100 における0℃の線を「着氷の目安」として表示しています。例の10月の図では、表にある0℃高度が 14,000〜15,000ft と高いため、地図上に青い破線は現れていません。
例の図を具体的に見てみると、左の地図では四国西部に茶色の破線で囲まれた乱気流の範囲があり、「XXX/110」と高度が添えられています。その周辺や日本海には赤い雷の記号が並び、緑色の雨の範囲と重なっています。右の地図に目を移すと、高知付近から東の海上と九州北方の日本海に視程 5km 未満の薄いオレンジが広がり、九州の西や四国の南の海上は雲の範囲を示す線で囲まれています。
図の下の表:空港ごとの列の読み方

図の下部にある表には、その領域内の主な空港における上空の予想が、空港ごとに縦1列で並んでいます。列の一番下にあるのは RJOB(岡山)や RJOK(高知)といった ICAO の4文字コードです。
上から順に見ていくと、最上段の「CLOUD TOP/BASE」がその空港上空の雲頂と雲底、次の「0℃ LEVEL」が0℃の高さ、つまりフリージングレベルです。どちらも 100ft 単位で、「140」なら 14,000ft を表します。その下の「FL100」「FL050」「FL020」「SFC」の4段には、各高度の風・気温・空気の湿り具合が入ります。
風向は矢印の向き、風速の階級は矢印の色で読み取ります(凡例の Wind では、白が 1kt 以上、水色が 10kt 以上、青が 20kt 以上、緑が 30kt 以上、黄が 40kt 以上…と続きます)。矢印の右にある赤い数字は気温(℃)で、凡例の「M12」のように M が付くものは氷点下です。数字の下に緑の四角が付いている箇所は、凡例で「Moist Air(T−Td ≦ 1.2℃)」と示される湿域で、気温と露点温度の差がごく小さい湿った空気を表しています。
例の表で RJOK(高知)の列を読むと、雲底が 15(1,500ft)、雲頂が「XXX」、0℃高度が 150 となっており、FL100・FL020・SFC に緑の四角が付いています。一方、RJOB(岡山)の列は雲の欄が横線のみで、湿域の四角も付いていません。
なお、地図や表に出てくる「XXX」や横線については、図の凡例に説明がありません。出確くんでは、「XXX」はこの図の対象範囲(地上〜約15,000ft)の外にあるもの、雲の欄の横線は雲が予想されていないものとして扱っています。
VFR で見るポイント
ブリーフィングでこの図を使うときは、まず表の中から出発空港と到着空港の列を確かめます。雲底の数字と SFC の湿域を見て低い雲がかかりそうかを読み取りますが、数字は 100ft 単位のフライトレベルなので、空港の標高を差し引いて考えることが欠かせません。
空港の状況を押さえたら、右の地図で経路上をたどります。予定高度と雲底の数字を比べつつ、オレンジ色の視程不良域が経路にかかっていないかを見ます。出確くんの VMC/IMC 判定も地上視程 5,000m を境にしているため、視程 5km 未満を表す薄いオレンジは特に見落とせない色です。続けて左の地図で、発雷域の目印となる雷の記号や乱気流の範囲を確認します。乱気流については添えられた数字で高さを読み取り、自分が飛ぶ高度帯にかかるかを確かめます。
高度を検討する際は、着氷の目安となるフリージングレベルと湿域もあわせて見ておきます。表の0℃高度と緑の四角(湿域)がある高さを予定高度と照らし合わせ、もし地図上に0℃の線が描かれていれば、経路のどこを横切るかも把握しておきます。
また、1枚の図は1つの時刻を切り取った予想なので、FT3・FT6・FT9 の3枚を並べて見比べ、悪天域が経路へ近づいてくるのか離れていくのかという時間変化を追います。そのうえで、自動作成の図であることを踏まえ、到着空港の予想は TAF で、現在の実際の様子は METAR で必ず確認します。METAR や TAF の時刻も末尾に Z が付く UTC 表記なので、図と同じく9時間を足して日本時間にそろえると比較しやすくなります。
なお気象庁からは、都道府県単位の領域で1時間ごとに9時間先まで予想する「下層悪天予想図(詳細版)」も提供されています。県内の短いフライトなどでは、こちらを併用すると天気が変わるタイミングをより細かくつかめます。
出確くんで見るには
出確くんでは、ブリーフィング画面の「下層悪天予想図」欄に FT3・FT6・FT9 の3枚が並んで表示されます。それぞれの図には「○日○時発表 ○日○時の予想(FT3)」という形で日本時間の時刻が添えられ、気象庁のページへのリンクも付いています。
図の下の表に入力した空港の列が含まれていれば、その列を赤い枠で囲んで表示します。高松や羽田のように表に載っていない空港は囲まれません。経路ブリーフィングでは、通過地点がかかる地域ごとに FT3・FT6・FT9 を並べ、西の地域から順に表示します。気象庁の次の更新を待つあいだに予想時刻を過ぎてしまった図については、その旨を書き添えて表示する仕組みになっています。
参考にした資料
- 気象庁:航空気象情報
- 気象庁:下層悪天予想図
- 気象庁:下層悪天予想図(詳細版)
- 国土交通省航空局:小型航空機の安全に関するお知らせ No.113「下層悪天予想図を提供しています~気象庁より~」(2026年6月26日)
- 国土交通省航空局:小型航空機の安全に関するお知らせ No.41「下層悪天予想図を提供しています~気象庁大気海洋部より~」(2020年12月28日)
- 気象庁:下層悪天予想図(詳細版)の提供開始について(2022年3月16日)
この記事は資料の見方の説明です。運航の可否は、必ず公式の情報を確認のうえ機長が判断してください。
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