地上天気図(ASAS・FSAS)の見方
地上天気図は、海面に換算した気圧の分布に、高気圧・低気圧・前線を描き込んだ図です。飛行経路や空港の周辺にどのような気圧配置があり、それがどう動く予想になっているのか、全体の流れをつかむブリーフィングの入口になります。気象庁でも、アジア太平洋域の天気図は船舶や航空機の運航計画に適した資料として案内されています。
ここでは、気象庁が発表している英語表記の地上天気図「ASAS」と「FSAS」を中心に、図に描かれた記号の読み方を整理します。
ASAS と FSAS24・FSAS48 の違い
| 図 | 中身 | 作る回数と発表の目安 |
|---|---|---|
| ASAS(アジア太平洋域 実況天気図) | 観測時刻の気圧配置・前線、海上警報、各地の観測値 | 1日4回(日本時間3・9・15・21時の観測)。観測時刻の約2時間30分後 |
| FSAS24(24時間予想図) | 24時間後の気圧配置・前線、30ノット以上の風の域、霧域、船体着氷域、海氷域 | 1日2回(9時・21時の観測から)。9時の観測の図は15時ごろ、21時の観測の図は翌朝4時ごろ |
| FSAS48(48時間予想図) | 48時間後の気圧配置・前線など(霧域は描かれません) | 9時の観測の図は17時ごろ、21時の観測の図は翌朝6時ごろ |
いずれの図も、時刻は左上と右下に協定世界時(UTC)で記されています。METAR や TAF の「Z」と同じ表記で、9時間を足すと日本時間になります。たとえば「310600UTC OCT.2026」なら2026年10月31日06時UTC、日本時間では31日15時です。予想図である FSAS では、その下に予想の対象時刻が「FCST FOR 010000UTC」のように記されており、この例では日本時間11月1日9時の予想を表します。なお、予想図には高気圧・低気圧の移動方向を示す矢印や移動速度は描かれません。

上の FSAS24 を見ると、北日本周辺の低気圧(978〜980hPa)の近くに、30ノット以上の強風域を示す灰色の矢羽が並び、その周囲に霧域(FOG)が描かれています。日本の南にある台風第31号には、中心気圧と最大風速(MAX85KT)が添えられています。
このほか気象庁からは、日本語表記の「日本周辺域」の天気図(実況は1日7回)も発表されています。
等圧線と高気圧・低気圧

図の上を走る曲線は、海面更正された気圧を結んだ等圧線です。4hPaごとに細い実線、1000hPaや1020hPaといった20hPaごとに太い実線が引かれ、必要な箇所には2hPaごとの補助線が細い破線で入ります。等圧線の向きから風向の傾向が、間隔の混み具合から風の強さが読み取れます。
気圧の中心は「×」印で示され、青い「H」が高気圧、赤い「L」が低気圧(または低圧部)、「TD」が熱帯低気圧です。中心を囲む最も内側の等圧線の値が中心気圧になります(台風には例外があります)。白抜きの矢印は移動の向き、「15KT」などの数字は移動の速さ(ノット)です。5ノット以下で向きが定まっている場合は「SLW」(ゆっくり)、5ノット以下で向きが定まらない場合は「ALMOST STNR」(ほとんど停滞)と表記されます。上の図では、日本の南の海上に中心気圧940hPaの台風第31号があり、英文コメントで最大風速などが記載されています。
前線の記号

| 前線 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 寒冷前線 | 青い三角が片側に並ぶ | 寒気が暖気の側へ進む前線 |
| 温暖前線 | 赤い半円が片側に並ぶ | 暖気が寒気の側へ進む前線 |
| 停滞前線 | 赤い半円と青い三角が反対側に交互 | ほぼ同じ位置にとどまる前線 |
| 閉塞前線 | 三角と半円が同じ側に交互(この図では赤紫色) | 寒冷前線が温暖前線に追いついた前線 |
寒冷前線と温暖前線は、記号が付いていない側から付いている側へと進みます。上の図では、東シナ海から西日本の南にかけて停滞前線が横たわり、そこから北東の北海道の東にある低気圧(1004hPa)へ向かって寒冷前線がのびています。低気圧の近くには閉塞前線と温暖前線も見られます。前線は性質の異なる寒気と暖気の境目にあたるため、通過や接近に伴って風向・風速の変化や降水がみられることが多いとされています。
風の矢羽と海上警報の記号

実況図の ASAS には、一部の観測点のデータが国際式の天気記号で記入されています。地点を示す丸から、風が吹いてくる方向に向かって矢羽の線が伸びており、風向は36方位、風速は5ノット単位で表されます。短い羽が5ノット、長い羽が10ノット、三角の旗が50ノットです。地点の丸が三角形で囲まれているものは、自動観測の地点を表します。
また、図中の [ ] が付いた記号は船舶向けの海上警報です。
| 記号 | 名前 | 発表の基準 |
|---|---|---|
| FOG[W] | 海上濃霧警報 | 視程0.3海里(約500m)以下 |
| [W] | 海上風警報 | 熱帯低気圧による最大風速28ノット以上34ノット未満 |
| [GW] | 海上強風警報 | 最大風速34ノット以上48ノット未満 |
| [SW] | 海上暴風警報 | 最大風速48ノット以上 |
| [TW] | 海上台風警報 | 台風による最大風速64ノット以上 |

緯度・経度で区切られた警報の対象海域は、凡例にある波形の線で囲まれます。暴風警報の対象となっている低気圧や台風には、12時間後・24時間後の予報円(破線の円)と「311800Z」のような対象時刻が添えられ、新たに発生が予想される低気圧には「New」の文字と予報円が付きます。先ほどの日本付近を切り出した図では、北海道の西と日本の東の低気圧付近に [SW]、北日本の海上に FOG[W] が記されています。
パイロットとして見るポイント
ブリーフィングで地上天気図を開くときは、まず時刻の照合から入ります。ASAS の観測時刻や FSAS の「FCST FOR」(予想時刻)を日本時間に直し、自分が飛ぶ時間帯とそろえたうえで、ASAS → FSAS24 → FSAS48 の順に並べて低気圧や前線の位置の移り変わりを追います。
全体の流れが見えたら、飛行経路や使用する空港の近くに低気圧の中心や前線がかかっていないか、等圧線の間隔が混んで強風になっていないかを確認します。洋上や沿岸部では、海上警報の記号と範囲、FSAS の強風の矢羽や霧域も手がかりになります。そのうえで、各地点の実際の地上風は METAR や TAF と突き合わせ、雲・視程・乱気流・着氷といった具体的な現象は、下層悪天予想図や TAF などの航空気象資料で掘り下げて確認します。
出確くんで見るには
出発・経路(経由地)・到着・ダイバートを入力してブリーフィングを作成すると(いずれか1つだけでも作成できます)、「地上天気図」の欄に気象庁の ASAS(実況)と FSAS24・FSAS48 のカラー図が並びます。それぞれの図には「○日○時解析」「○日○時発表 ○日○時の予想」の形式で時刻が表示され、予想時刻を過ぎた予想図は表示されません。
なお、ブリーフィングの文章で触れている高気圧・低気圧・前線の位置は、実況と24時間後について、同じ時刻の気象庁「日本周辺域」の天気図を画像解析して読み取ったものです。48時間後の図(FSAS48)は画像の表示のみで、文章の生成には使っていません。
参考にした資料
- 気象庁「天気図について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/tenkizu.html
- 気象庁「アジア太平洋域 実況天気図の説明」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/ASAS_kaisetu.html
- 気象庁「予想天気図の説明」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/FSAS_kaisetu.html
- 気象庁「国際式の天気記号と記入方式」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/symbols.html
- 気象庁「天気図の有効な活用について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/tenkizu_katuyo.html
- 気象庁「予報用語(気団・前線・気圧配置・天気図など)」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi3.html
- 気象庁「よくある質問(湿度・気圧・日照時間について)」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq5.html
- 気象庁「実況資料の解説」(PDF) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/kaisetsu_jikkyo.pdf
- 気象庁「予想資料の解説」(PDF) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/kaisetsu_yosou.pdf
- 気象庁「天気図」(最新の実況天気図・予想天気図) https://www.jma.go.jp/bosai/weather_map/
この記事は資料の見方の説明です。運航の可否は、必ず公式の情報を確認のうえ機長が判断してください。
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