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高層天気図(300・500・700・850hPa)の見方

資料の見方  公開 約8分で読めます

地上天気図が「地面の上」の気圧配置を表すのに対し、高層天気図は「上空」の様子を描いた図です。上空の風や気温、湿り気は、雲や雨だけでなく乱気流や着氷とも深く関わっています。気象庁も、航空機の運航では飛ぶ高さの高層天気図で気温や風をつかむことを活用の例に挙げています。この記事では、気象庁の高層天気図4枚と、あわせて確認したい渦度・上昇流・相当温位の図の読み方をまとめます。

高層天気図の基本と各高度の役割

高層天気図は、300hPaや500hPaなど同じ気圧になる面の上の様子を描いた図で、気象庁が1日2回作成しています。500hPaと300hPaは「AUPQ35」、850hPaと700hPaは「AUPQ78」という1枚の図にそれぞれまとめられており、図の下にある「181200UTC OCT 2026」は、作成に使った観測データの時刻(18日12時UTC=日本時間18日21時)を示しています。

図の実線は、その気圧になる高さ(m)が同じ所を結んだ等高度線で、線の上に値が書かれています。破線は同じ気温(℃)を結ぶ等温線ですが、300hPaだけは破線が等風速線になっており、気温は線の代わりに値を並べて示しています。大陸部分の網掛けは標高の高い土地を表し、縦線が1,500m以上、格子が3,000m以上です。また、各観測点にはラジオゾンデで観測した値が記されており、数字の上段が気温、下段が湿数(気温と露点の差)です。風の矢羽は風が吹いてくる方向に線が伸び、三角のペナントが50ノット、長い線が10ノット、短い線が5ノットを表します。

500hPa高層天気図の観測点を拡大した図
出典:気象庁(アジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図 AUPQ35、2026年10月18日21時の観測による図。一部を拡大)

たとえばこの拡大図で「−9.9」「2.4」と書かれた観測点では、気温が−9.9℃、湿数が2.4℃と読み取れます。矢羽は西の方へ伸びているため、西寄りの風です。

4枚の図の高さの目安と、主に見るものは次の表のとおりです。

気圧面等高度線を引く起点の値主に見るもの
300hPa9,600m(約31,500ft)ジェット気流、上空の寒気
500hPa5,700m(約18,700ft)気圧の谷・尾根、上空の寒気、渦度
700hPa3,000m(約9,800ft)中層の湿り(湿域)、上昇流
850hPa1,500m(約4,900ft)下層の風の流れ、湿り、寒気・暖気、相当温位

等高度線は表の値を起点に一定の間隔で引かれます。ここにある値はおおよその高さの目安なので、実際の高さは図の等高度線から読み取ります。

300hPa・500hPa:ジェット気流と渦度の正の極大値

300hPa高層天気図
出典:気象庁(AUPQ35、2026年10月18日21時の観測による図。300hPaの面を切り出し)

300hPaで特に重要なのが、上空の帯状の強い風であるジェット気流です。破線の等風速線は20ノットごとに引かれており、おおむね80ノット以上の風速の大きい所を結んでジェット気流の位置をとらえます。この図では、朝鮮半島から日本付近を通って東へ「100」「120」の値の付いた等風速線がのび、それに沿う観測点に三角のペナントが付いた矢羽が並んでいます。東京航空地方気象台(気象庁)の解説によると、晴天乱気流(CAT)は、深い気圧の谷の近くやジェット気流の前線帯、圏界面付近など、高さによる風の変化が大きい所で起こりやすく、ジェット気流が強まる秋から春に多いとされています。

500hPa高層天気図
出典:気象庁(AUPQ35、2026年10月18日21時の観測による図。500hPaの面を切り出し)

500hPaでは、等高度線が60mごと(300mごとに太線)、等温線が3℃ごと(寒い時期は6℃ごと)に引かれています。等高度線の曲がり方から気圧の谷や尾根を、等温線から上空の寒気を見ます。

500hPa高度・渦度の解析図
出典:気象庁(極東850hPa気温・風、700hPa上昇流/500hPa高度・渦度天気図 AXFE578、2026年10月18日21時の解析。上段の500hPaの面を切り出し)

あわせて確認したいのが、500hPaの高度・渦度の解析図です。実線が等高度線、破線が40×10⁻⁶/秒ごとの渦度を示しています。渦度は流れの回転の強さのことで、低気圧性の回転を表す正の渦度の領域が縦線の網掛けになっており、周りより値が大きい所には「+」と値(正の極大値)が書かれます。500hPaでは渦度がおおむね保たれるため、正の極大値を追うことで上空の気圧の谷の動きがつかめます。気象庁の解説では、東へ進む気圧の谷の前面(東側)で地上の低気圧が発生・発達しやすいとされています。この図でも、日本海から北日本にかけて網掛けが広がり、「+」と値がいくつも記されています。

700hPa:湿域と上昇流

700hPa高層天気図
出典:気象庁(アジア850hPa・700hPa高度・気温・風・湿数天気図 AUPQ78、2026年10月18日21時の観測による図。700hPaの面を切り出し)

700hPaは中層の湿り具合を見る図です。点の網掛けが湿域で、湿数が3℃未満の所を表しています(図の下の注記は「T-TD<3°C」)。この図では日本海から北日本にかけての所などに網掛けが見られます。等温線は6℃ごとです。

850hPa気温・風、700hPa上昇流の解析図
出典:気象庁(AXFE578、2026年10月18日21時の解析。下段の面を切り出し)

こちらは850hPaの気温・風と、700hPaの上昇流を重ねた解析図です。700hPaの上昇流(鉛直P速度)は、0の線が細い実線、ほかは20hPa/時ごとの破線で描かれ、値がマイナスになる上昇流の所が縦線の網掛けになっています。太い実線は3℃ごとの850hPaの気温(寒気の中心に「C」、暖気の中心に「W」)、矢羽は850hPaの風です。上昇流は、湿りなどの条件がそろえば降水に結びつくため降水域を見積もる目安になりますが、渦度と違って保たれないので、ほかの要素とあわせて見ます。

850hPa:相当温位と前線帯

850hPa高層天気図
出典:気象庁(AUPQ78、2026年10月18日21時の観測による図。850hPaの面を切り出し)

850hPaでは、観測点の矢羽から下層の風の流れを読み取り、700hPaと同じく点の網掛けの湿域と等温線(3℃ごと、寒い時期は6℃ごと)で湿りと寒気・暖気を見ます。850hPaと700hPaの0℃の等温線や観測点の気温は、フリージングレベル(0℃高度)の見当をつける手がかりになります。

850hPa相当温位・風の予想図
出典:気象庁(日本850hPa相当温位・風予想図 FXJP854、31日9時発表 31日21時の予想。左上の面を切り出し)

こちらの予想図は、実線が3Kごとの相当温位、矢羽が850hPaの風です。相当温位は気温と湿り気をひとつにまとめた値(単位K)で、暖かく湿った空気ほど大きくなります。相当温位を見ると、暖かく湿った空気が流れ込む様子や乾いた空気の広がりが分かり、線が込み合った集中帯は地上の前線を考えるときの参考になることがあります。2つの気団の境目の領域である前線帯には、ふつう100km以上の幅があります。この図では、日本の南の海上を通って日本の東へ、線が込み合った帯がのびています。なお、気象庁の850hPaの相当温位は予想図(12〜48時間後)だけです。

パイロットとして見るポイント

実際に高層天気図を見るときは、まず巡航高度に近い気圧面を選び、その高さの風向・風速と気温を読み取ります。ジェット気流の位置は、向かい風や追い風の強さを知るほか、乱気流の手がかりとしても確認しておきます。ただし、乱気流そのものは国内悪天予想図などで確かめます。また、850hPaと700hPaの気温からは0℃の高さの見当をつけます。気象庁の下層悪天予想図でも、0℃ラインは着氷の目安として示されています。

あわせて大切なのが、1枚の図だけで判断せず、複数の層を重ねて立体的にとらえることです。500hPaの正の極大値、700hPaの湿域と上昇流、850hPaの相当温位の集中帯、そして地上天気図の低気圧や前線の位置を並べて見比べます。その際に見落としやすいのが図の時刻です。高層天気図や AXFE578 は観測時刻の図ですが、FXJP854 などの予想図は「○日○時発表 ○日○時の予想」の図になっています。地上天気図も含め、時刻をそろえて見比べるようにします。

出確くんで見るには

ブリーフィングの「高層天気図」の欄には、300・500・700・850hPaの4枚が並びます。いずれも日本付近を切り出した図で、日本の陸地を茶色にしています。

500hPaの図には、渦度が正の所が薄いピンクで、120以上(10⁻⁶/秒)の正の極大値が赤紫の丸と「+166」のような値で重ねてあります。700hPaの図では、上昇流を薄い赤、湿域を薄い緑、両者が重なる所を赤と緑のしまで重ねており、上昇流には同じ時刻になる予想図(12時間前の発表)を使って、図にその時刻を書いています。850hPaの図には、相当温位の茶色の等値線(3Kごと)と値に湿域の緑を重ねており、この相当温位にも同じ時刻になる予想図を使っています。

500・700・850hPaの図は、左右の矢印で元の高層天気図や重ねる元にした図へ切り替えられます。その下の「高層天気図の移り変わり」の欄では、500・700・850hPaの予想図を12〜72時間後まで矢印で送って見られます。

参考にした資料

  • 気象庁「高層天気図について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/upper_map.html
  • 気象庁「天気図について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/tenkizu.html
  • 気象庁「天気図の有効な活用について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/tenkizu_katuyo.html
  • 気象庁「実況資料の解説」(PDF) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/kaisetsu_jikkyo.pdf
  • 気象庁「予想資料の解説」(PDF) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/kaisetsu_yosou.pdf
  • 気象庁「専門用語」(PDF) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/yougo_senmon.pdf
  • 気象庁「予報用語(気団・前線・気圧配置・天気図など)」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi3.html
  • 気象庁「高層天気図」 https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/#type=upper
  • 気象庁「数値予報天気図」 https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/#type=nwp
  • 気象庁「航空気象情報」 https://www.data.jma.go.jp/airinfo/index.html
  • 東京航空地方気象台「羽田空港 WEATHER TOPICS 乱気流」 https://www.data.jma.go.jp/haneda-airport/weather_topics/wt_turb.html
  • 東京航空地方気象台「晴天乱気流(CAT)」(PDF) https://www.data.jma.go.jp/haneda-airport/weather_topics/file/rjtt_wt20121031.pdf
  • 国土交通省航空局「下層悪天予想図を提供しています~気象庁より~」(PDF) https://www.mlit.go.jp/koku/content/002008750.pdf

この記事は資料の見方の説明です。運航の可否は、必ず公式の情報を確認のうえ機長が判断してください。

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