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気象衛星とレーダーの見方

資料の見方  公開 約9分で読めます

天気図や予想図が計算によって導き出された姿だとすれば、気象衛星とレーダーはいま実際に見えている空の姿そのものです。衛星は雲を上から見下ろし、レーダーは雨や雪を電波でとらえます。どちらも数分から十分おきに更新されるため、出発直前の最終確認や、事前の予想図と実際の空模様にずれがないかを確かめる場面で欠かせません。ここでは、それぞれの画像に何が写り、何が写らないのかを整理します。

衛星画像の3つの種類

気象庁のホームページで見られるひまわりの画像のうち、ブリーフィングでよく使うのは赤外・可視・水蒸気の3種類です。

画像何を見ているか白く写るもの夜間
赤外画像雲や地表が出す赤外線(雲の温度)温度の低いもの=雲頂の高い雲使える
可視画像雲や地表が反射した太陽光厚くて雲粒の多い雲使えない(雲が写らない)
水蒸気画像上空(対流圏の上・中層)の水蒸気からの赤外線上・中層が湿っているところ使える
赤外画像
出典:気象庁(ひまわり 赤外画像、2026年10月19日10時30分の観測。出確くんが岡山空港を中心に約1600km四方を切り出し、海岸線と空港の赤い点を加えたもの)

赤外画像は、温度の低い雲ほど白く表示します。上空へ行くほど気温は下がるため、厚みのある雲であれば、白く写るものほど雲頂が高いと読めます。ただ、薄い雲は下からの赤外線が透けて通るぶん、実際より暗く、つまり雲頂が低いように見えることがあります。逆に、雲頂の低い層雲や霧は地面や海面と温度がほとんど変わらないため、灰色や黒に写って地表と見分けがつきにくくなります。また、白く写る雲には発達した積乱雲だけでなく薄い巻雲も含まれるため、白いからといって下で雨が降っているとは限りません。

上の赤外画像を見ると、日本海から北陸・東北にかけて白い帯状の雲が広がり、四国の南の海上にもまとまった白い雲域があります。一方、右下の海上は暗い灰色になっています。

可視画像
出典:気象庁(ひまわり 可視画像、2026年10月19日10時30分の観測。出確くんが岡山空港を中心に約1600km四方を切り出し、海岸線と空港の赤い点を加えたもの)

可視画像は、人間の目で見た感覚に近い画像です。雨粒や雲粒を多く含んだ厚い雲ほど太陽光を強く反射して白く写ります。解像度が高く、雲の表面のきめ細かさまで判別できるのが利点で、層状の雲はなめらかに、対流雲はでこぼこした質感で見えます。太陽光のない夜間は雲が写りません。

同じ時刻の可視画像を見ると、赤外画像では暗い灰色にしか見えなかった右下の海上に、小さな白い粒のような雲がいくつも並んでいるのが確認できます。

水蒸気画像
出典:気象庁(ひまわり 水蒸気画像、2026年10月19日10時30分の観測。出確くんが岡山空港を中心に約1600km四方を切り出し、海岸線と空港の赤い点を加えたもの)

水蒸気画像は、雲が発生していない場所でも、対流圏の上・中層に含まれるわずかな水蒸気をとらえます。湿った領域が白く、乾いた領域が黒く表現されるため、複数枚を連続再生すると上空の大気の流れがつかめます。あくまで上・中層を見る画像なので、霧や低い雲を探す用途には向きません。この画像では、赤外画像で白かった帯状の雲や四国の南の雲が、同じように白く写っています。

3枚を見比べて雲を見分ける

1種類だけでは判断に迷う雲も、赤外画像と可視画像を並べて見比べると正体がつかみやすくなります。気象衛星センターの解説をもとに、運航上気をつけたい雲の見え方を表にまとめました。

雲赤外画像可視画像見分けるヒント
霧・層雲暗い(地表・海面とほぼ同じ)明るい灰色〜白、表面がなめらか山地に接すると、雲の縁が地形の等高線に沿った形になりやすい
積雲・層積雲などの低い雲暗い灰色〜明るい灰色白〜明るい灰色、縁がくっきり赤外で暗いのに可視で白い
薄い巻雲(上層雲)白い灰色で、下の雲や陸地が透けて見える縁が毛羽立ってほつれたように見える
積乱雲もっとも白いもっとも白く、塊状でごつごつ塊がまとまって大きくなる。濃い巻雲とまぎらわしいときは動きで見分ける(積乱雲のほうが動きが遅い)

先ほどの画像で、右下の海上の雲が赤外で暗く、可視で白い粒として写っていたのは、表にある低い雲の典型的な見え方です。対して、四国の南の海上の雲は、赤外・可視・水蒸気のすべてで白く写っています。

気象庁のホームページには、雲頂の高い雲の範囲に色を付けた「雲頂強調画像」も用意されています。赤みがかった領域には積乱雲が含まれている可能性があり、昼間の可視画像で雲頂がでこぼこして見える場所が赤く色付けされていれば、積乱雲が存在すると判断できるとされています。なお、この色分けはレーダーで観測した雨の強さを表すものではありません。

レーダーの見方:降水強度の色と、映らないもの

レーダーエコーの実況
出典:気象庁(高解像度降水ナウキャスト、2026年10月31日18時00分の実況。出確くんが岡山空港を中心に切り出し、半径300kmの円と空港の赤い点を加えたもの)

気象レーダーは、回転するアンテナから発射した電波が雨や雪に当たって跳ね返ってくる反射波(エコー)の強さから、降水の強さを測る観測機器です。気象庁は全国20か所にレーダーを設置しています。画像の色分けは1時間あたりに換算した降水強度(mm/h)を示しており、出確くんの「雨雲の動き」の凡例も気象庁と同じ8色です。気象庁の「雨の強さと降り方」で定められた予報用語とは次のように対応します。

降水の強さ(mm/h)色気象庁の予報用語
1 未満ごく薄い色—
1〜5水色—
5〜10青—
10〜20濃い青やや強い雨
20〜30黄強い雨
30〜50オレンジ激しい雨
50〜80赤非常に激しい雨
80 以上赤紫猛烈な雨

上の実況図では、岡山空港の周辺にエコーはありませんが、半径300kmの円の北東端にあたる北陸の沿岸から日本海にかけて小さなエコーが点在し、一部に黄色や赤の領域を含んでいます。気象庁の解説では、赤などの暖色で示される発達したエコーがある周辺では、落雷や突風、急な大雨に注意が必要とされています。

その一方で、レーダーには映らないものや、実態とは違って映るものもあります。そもそもレーダーがとらえるのは雨や雪の粒なので、降水を伴わない雲や霧は映りません。エコーがまったくない空域でも、低いシーリングや視程障害は起こり得ます。また、電波は直進するため山の裏側が死角になるほか、地球の丸みの影響でレーダーサイトから離れた場所ほど電波が高い空を通過してしまい、低い高度の雨や雪をとらえきれなくなります。

逆に、雨が降っていないのにエコーが出る現象もあります。大気の状態によって電波が曲げられて地表に当たる「異常伝搬」、山や建物・風車などの反射による「グランドクラッタ」、強風時の波しぶきをとらえる「シークラッタ」などがその代表です。降水の強さが実態とずれるケースもあり、気温0℃の高度付近で融けかけた雪の層が電波を強く跳ね返して実際より強い雨に見せる「ブライトバンド」や、手前の激しい雨で電波が減衰して奥の雨が実際より弱く見える現象が知られています。なお、乱気流や着氷そのものもレーダー画像には表示されません。

ナウキャストと降水短時間予報の違い

降水短時間予報
出典:気象庁(降水短時間予報、2026年10月31日17時50分発表 31日20時50分までの1時間降水量の予想。出確くんが岡山空港を中心に切り出し、半径300kmの円と空港の赤い点を加えたもの)

レーダー観測をもとに作られる予想図には、対象とする時間帯と表す内容が異なる2種類があります。

高解像度降水ナウキャスト(雨雲の動き)降水短時間予報(今後の雨)
予想の長さ1時間先まで15時間先まで
表すものその時刻の降水の強さ(mm/h)1時間降水量(mm)
細かさ30分先まで250m、35〜60分先は1km6時間先まで1km、7〜15時間先は5km
作り方レーダー・雨量計などの観測から降水を立体的に解析し、移動や発達を予測6時間先までは直前の雨の動きを延ばし、後半は数値予報も加味。7〜15時間先は数値予報(MSM・LFM)を統計的に処理して組み合わせる

目先1時間の雨雲の細かな動きを追うのがナウキャスト、数時間先までの大まかな雨の分布を把握するのが降水短時間予報です。利用にあたって気象庁は、既存の降水域の移動をベースにした予測では新たに湧き上がる雨雲を反映できないこと、局地的な大雨は予測が難しく突然予想に現れる場合があること、そして先の時間になるほど精度が落ちるため常に最新の発表を確認することを注意点として挙げています。

上の図は、前の章のレーダー実況より少しあとに発表された降水短時間予報です。北陸から近畿北部、日本海にかけて薄い色の帯が広がっています。実況図が「その瞬間の強さ」を表すのに対し、この図は「1時間に降る量」を表すため、同じ雨であっても色の出方が変わる点には注意が必要です。

パイロットとして見るポイント

ブリーフィングでこれらの画像を開くときは、まず時刻を確認します。衛星画像の観測時刻やレーダーの実況時刻がいつなのかを見たうえで、UTC(末尾の Z)で表記される METAR や TAF と照らし合わせる際は、日本時間(UTC+9時間)に換算して基準をそろえます。また、静止画1枚で分かるのはその瞬間だけの切り取りにすぎません。時間を追って連続再生すると、雲や雨域がどの方向へどれくらいの速さで進んでいるのか、発達傾向にあるのか衰弱しているのかが見えてきます。

情報の使い分けと重ね合わせも重要です。シーリングや霧の有無は可視画像と METAR で追い、降水の位置と強さはレーダーで確かめます。レーダーにエコーがないからといって VMC とは限りません。積乱雲を警戒するときは複数の資料を重ねて見ます。赤外でも可視でも白くごつごつした塊があり、同じ場所にレーダーで黄〜赤の強いエコーが出ていれば、飛行経路や高度を見直す判断材料になります。可視画像が使えない夜間は、気象庁の航空気象情報のページにある「霧プロダクト」や「積乱雲情報」といった衛星解析資料も役立ちます。

出確くんで見るには

ブリーフィング画面の「衛星画像」の欄には、赤外・可視・水蒸気の画像が並びます。いずれも空港を中心とした約1600km四方を切り出して海岸線を重ねたもので、中心の赤い点が空港の位置を示します。画像には「19日10時30分観測」のように観測時刻が日本時間で記載され、夜間は可視画像を表示せず、その旨が添えられます。経路ブリーフィングの場合は、経路の中心で切り出した地図上に各地点と経路の直線を描いた図になります。

「レーダーエコー」の欄では、解説文のすぐ下に「雨雲の動き」が表示されます。気象庁の高解像度降水ナウキャストと降水短時間予報を組み合わせ、1時間前からの実況、1時間先までの5分ごとのナウキャスト予想、さらにその先15時間先までの1時間ごとの降水短時間予報を1本の時間軸にまとめています。再生ボタンでの連続表示やバー操作での時刻指定ができるほか、地図のドラッグ移動や拡大・縮小にも対応しています。空港を中心に半径300km(約160NM)の実線と100km(約54NM)の点線の円が描かれており、時刻表示は日本時間、「現在」とあるのが最新の実況時刻です。レーダーの観測範囲外は斜線で示されます。

参考にした資料

この記事は資料の見方の説明です。運航の可否は、必ず公式の情報を確認のうえ機長が判断してください。

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